日本の健康保険なら国保だろうが、働く会社を通した保険組合の保険だろうが、私が毎月払う掛け金に違いがあっても、医療機関で私が受ける医療に対する料金が変わることはない。だからこそ、アメリカでの健康保険の仕組みは理解に苦しむ。
アメリカ生活と健康保険
アメリカでの暮らしが長くなるなら、絶対に必要だと感じるのは健康保険だ。現代のアメリカ医療費は信じられないほど高い。医療系のサービスを受ける場合、何をするにしても高額な医療費を求められることになる。
ちょっとした検査でレントゲンや、キャットスキャンの撮影、それに血液検査をしただけで、簡単に日本円にして20万以上の請求をされることが想定される。だから日々の暮らしで何か大きな事故や怪我をする可能性が少しでもある以上、破産してしまうような治療費を避けるためには健康保険は必要だ。
そんなわけで私も健康保険に入ることにしたのだが、これがまたややこしい。夫の健康保険に配偶者として加えてもらおうと思ったら、私は持病を抱えているために加入を断られてしまったのだ。そんなわけで、突如アメリカの健康保険について色々調べてることになった。
会社員と健康保険
通常アメリカでも会社員の場合、雇用者である会社が福利厚生として健康保険を提供している場合が多い。医療機関で支払うにしても、個人負担の軽い手厚い健康保険が付与されるようだ。但し、日本の会社員の健康保険と同じで、給料からの月額保険料の自己負担分があり、それは給与天引きされる。
ここからが日本と違う部分だが、この所属会社の健康保険には選択肢があるらしい。会社に入社する時には条件を詰めるが、この健康保険もその条件のひとつになるらしいのだ。健康保険は対象外にしてもらって、その分給与を増やしてもらうことだってできると聞く。
夫妻で共働きの場合は、夫妻それぞれ雇用先で健康保険に入ってもいいし、どちらかの健康保険に夫妻で加入してもいいらしい。という訳で、アメリカでは勤務先に同年代で、収入も同じ、家族構成も同じで共働きの同僚がいたとしても、必ずしも同じ健康保険に属しているとは限らないと聞く。
アメリカの健康保険
幾つかの州では健康保険の加入を義務化しているようだが、アメリカの殆どの州では健康保険の加入を義務化していない。だから健康保険に加入していない人も結構存在していて、2024年のとある調査では0~64歳までの人口を対象にすると1割弱の健康保険未加入者がいるという記事を目にした。
10人に1人位の割合で健康保険に加入していないということになるが、恐らくこの人達は経済的余裕がなく、健康保険に加入していないのだと思う。
オバマケアと言われる政府主体の健康保険がアメリカにも出来たが、だからといってホイソレと誰でも容易に加入できるわけではない。オバマケアは低所得者向けのプログラムで、中流家庭の収入ある場合は加入が出来ないようだ。というわけで、加入者の保険料も所得によって違ってくる。
多くの人が利用するのは、昔から存在する営利を目的とした健康保険を提供する企業のプログラムで、住む州、年齢などにもよって毎月の保険料が変わるのだが、選んだプログラムの種類によって月々の保険料が変わる。とにかく色々な選択肢があり悩ましいのだ。
聞きなれない健康保険用語
あらためてアメリカの健康保険について調査を開始すると、聞きなれない用語が多いうえに、どのような健康保険を選ぶか選択肢が沢山ありすぎるのだ。ひとつのプログラムを選んでも、そこからさらに料金体系の違いもある。
日本でも火災保険や、生命保険を掛ける時に沢山の選択肢があるように、日々の生活を支える健康保険も同じように多種多様の選択肢が提供されていて、それを理解し吟味して、自分で選ぶ必要があるのだ。
月額保険料・プレミアム
英単語の「premium・プレミアム」と聞けば日本人の場合、他に比べ質の良い何かを指していると思うのではないだろうか?しかし、アメリカの健康保険で「premium・プレミアム」と言われるのは、月々の保険料のことを指す。「あなたのプレミアムは○○円です」と言うように使われている。
保険開始額・ディダクタブル
多くの健康保険で「deductible・ディダグタブル」という金額が示されているが、これは年間を通し、医療を受ける時、この金額まで保険サポートなしに100%自己費用負担する額である。累計の医療費支払い額がこのディダクタブルに到達すれば、医療費が保険でカバーされるようになる。
一部負担・コーインシュランス
保険開始のディダクタブルまでの負担金義務を超えた分から、「coinsurance・コーインシュランス」が適用され、 それ以降の医療費については保険会社が大部分を負担してくれるというようなもの。一般的には医療費の20%が自己負担になるようだ。
契約保険の種類によっては、ディダクタブル以上の負担金を求められず、コーインシュランスが存在しない為、ディダクタブルまで自己負担すればそれ以降の医療費は保険会社が負担するケースもある。
定額負担・コーペイ
クリニックや薬局での医療サービスを受ける場合、都度数十ドル定額負担をするタイプの保険、「copays・コーペイ」という健康保険も存在する。ただし、手術など高額医療を受ける場合、数十ドルの負担金では済まず、その場合は設定されている自己負担上限費用までは負担が必要になるようだ。
自己負担費上限額・アウトオブポケットマキシマム
どの保険タイプであったとしても、「out-of-pocket maximum・アウトオブポケットマキシマム」と言われる年間の自己負担費上限額が設定されている。年間で発生する上限額以上の医療費は、保険会社が負担することによって、個人が支払いしきれないような巨額の医療費請求から回避できる。
様々な健康保険プログラム
健康保険用語を5つ紹介したが、全ての健康保険プログラムにこの5つ全てが適用されるわけではない。契約する保険によって、「保険開始額・ディダクタブル」、 「一部負担・コーインシュランス」、「定額負担・コーペイ」があったりなかったりする。
加えて、毎月の支払保険料の支払額によって、医療費の自己負担金の額が増減する。というわけで、自分の経済力と、健康状況をよく考え、慎重に健康保険選びをする必要がありそうだ。
骨が折れるし面倒ではあるが、一人のセールスマンから受けた説明だけで判断して保険に加入するのではなく、ネットで情報を得たり、知り合いから情報を収集し、よく吟味して健康保険選びをする必要があると思う。
健康保険料金検索に注意
迂闊にも、私はウェブ保険料金検索に自分の情報を入力し、健康保険料金検索をしてしまった。それからの2週間、何十件もの健康保険のセールスからの絶え間ない電話を受ける事になってしまい、辟易してしまった。
セールスの電話に出ないという選択肢は有効ではない。なぜなら保険のセールマンは相手が電話にでなければ、何度でも電話をしてくるのだ。だから電話に出てさっさと断るか、電話拒否設定をスマホにしたりする必要がある。
明らかな新規健康保険加入者候補は、保険セールスにとって「カモ葱」なのだろう。たった一人の客でも年間何千ドルものお金を支払ってくれることになる。セールス担当には、新規顧客を得た場合、ボーナスもあるだろう。そりゃセールス側も必死で獲得に来る。
というわけなので、ウェブの保険料金検索の利用はあまり推奨しない。やはり、ある程度自分で調査をし、周りに居る信頼できる人達で保険について知っている人を紹介して貰ったりするのが良いと感じた。
理解しがたい健康保険のアレコレ
アメリカの健康保険は、日本のように国保か社保かのような仕組みではないから、この健康保険の仕組みを理解するのに苦労する。例えば働いていない妻が夫の保険に、追加の月額保険料の増額はあれど、加えてもらうことはアメリカでも誰もが当然のことだと考えるものだ。
ノーと言われる家族追加
しかし、既存健康保険加入者が自身の保険に配偶者を加えることを必ずしも認められるわけではない。私の夫の健康保険は昔から加入している古い型の健康保険で、新規に加入したくても現在では新規に契約できる保険ではない。
付加価値の高い健康保険なのだが、それゆえに持病持ちの私は、配偶者としての保険加入を断られてしまったのだ。そんな訳で、私だけが単身で加入できる健康保険を探す羽目になったのだ。
保険治療と自費治療
健康保険に加入し、健康保費提供会社が費用の負担をする状況になっても、必ずしも全ての治療費を保険会社が払ってくれるとは限らない。その治療が必要であると保険会社が認定しなければ、治療費用を保険会社が払ってくれることは無いのである。
その為、健康保険に加入している人でも、急病ではないケースで自分の健康に問題がある場合は、まずお金を払い医者を訪ね、医療について相談する。そこで医師から手術や治療の選択肢が与えられた場合、そのクリニックや病院が保険会社と話し、保険でカバーするか決議されるのだ。
費用負担の決定までは数日のこともあれば、数か月かかることもあるという。数か月待っても保険でカバーは出来ないと決定することもあるらしい。というように、アメリカで医療サービスを受ける場合、健康保険に加入していても、容易に治療を受けられる状況ではないということだ。
持病持ちは苦労する
健康保険に加入するのに苦労する要素は、やはり持病がある場合だ。私は持病があるが深刻ではない。ただ一定の薬を摂取する必要があるだけだ。私が加入した保険は持病についての保険カバーはない。但し、3年保険に加入し続けたら、3年目以降は持病についてもカバーされるらしい。
保険は適用されないにしても、薬の処方については、費用のディスカウントがされるような仕組みがあるらしく、100%費用自己負担であっても健康保険に入っていることにより、何らかの恩恵があるらしい。
加入する健康保険によって、持病に対する保険適用ルールも様々であることは間違いない。
私が選んだ健康保険
アメリカの健康保険は、本当に沢山の選択肢があるが、実は私が選んだのは正確にいうと健康保険ではない。私が選んだのは「メディシェア(Medi-Share)」と言われるクリスチャンの人が加入できる健康保険組合みたいなものなのだ。
その為 、メディシェアでは通常の保険用語は使われていないが、月額保険料と、年間の自己負担上限額と同等の条件が存在する。毎月一定の料金を支払い、年間での自己負担上限額までは自分で面倒をみることとなる。
始めの3年の間は、持病分の医療費用が自己負担上限額に加算されないが、それ以外の医療サービスは年間で加算され、毎年自己負担上限額以上の支払いはないというから、安心なのだ。
このメディシェアには医療コールセンターもあるし、保険の適用についても事前相談も事前相談が可能だ。救急案件は別として、このコールセンターを上手に利用できれば、後から医療費の支払いができなくなるような医療費請求を受けることはないはずだ。
メディシェアの条件
メディシェアは加入者はクリスチャンであることが条件になっている。なんとなくクリスチャンということではなく、イエスキリストを救い主と認め、イエスキリストを模範とし、キリスト教会に属し、自分をも大切にし神様に従順に生きることが求められる。
アルコール依存があったり、タバコ喫煙者であったり、薬物利用をする人はクリスチャンであっても加入が認められない。身長・体重・おなか周りサイズから肥満であると判断されると、月額料金に100ドル程の加算金が加えられるが、肥満改善できれば月額料金の加算金は取り除かれる。
信頼できる人達に聞いてみる
とにかくアメリカの健康保険は私が加入したメディシェアの様に保険に代わるものもあれば、保険会社が提供する無数の保険プランもあるし、オバマケアのような政府が提供する健康保険も存在する。
辟易する程の選択肢があるから、自分の選択肢で健康保険に加入しなければいけなくなったら、とにかく周りにいる信頼できる人達をみつけ、それぞれに相談してみるといい。
幾つもの健康保険候補を見つけ、それぞれをよく吟味し、自分に合う健康保険を見つける必要がある。私の様に、うっかりオンラインで自分の情報を入力し、企業のカモ候補にはならないように気を付けよう。