私の人生で継続してアメリカに1年住んだのは、実はベビーシッターのオペアプログラムに参加した時だけだ。その時はアメリカ生活に慣れることが大変だったし、1年のプログラムが終わったら日本に帰ることが分かっていたから、これといって日本の何かが恋しいと思うことは無かったように思う。
多く聞かれるWhat do you miss?
アメリカ人の夫と結婚してから私達の生活拠点はずっと日本だったが、数年前からアメリカ滞在時間が長くなり、私達の生活はアメリカを本拠地へとシフトし始めている。
どっぷりアメリカ生活が始まり、アメリカに住む人から「日本の何が恋しいか?」と聞かれることがちょいちょいある。
皆、家族や友人という返しを予想しているのか、日本食というような返しを期待して質問してくるのかは不明だが、それについて改めて考えてみると、自分が日本の何に対して想いを募らせているのか見えてきた。
時間に関係なく街をぶらぶら
今のアメリカ生活で、日本の何が恋しいか?と聞かれたら、家族や友人が恋しいというのは当たり前なのだが、私の場合他で思い当たるのは、「時間に関係なく街を一人でぶらつくこと」だと思う。
結婚してからの私の生活拠点は、常に東京の中心地にあった。思い立ったら、夜の遅い時間にだって一人で街を歩き、カフェに立ち寄ったり、近くのドン・キホーテを覗いてみたりなんていうことが出来る環境でくらしていたのだ。
夫と喧嘩をした夜には、夜中でも一人で家を出て長い散歩をし、漫画カフェに立ち寄ったこともある。
時には夫と二人で暇を持て余し、コンビニで飲み物やアイスを買って街中で人ウォッチングをしてみたりもした。とにかく私達の生活は街が常に身近にあり、いつだって外をプラっとすることができたのだ。
街ぶらがないアメリカ生活
私はアメリカの比較的大きな都市に住んでいるが、はっきり言ってぶらぶらする街は無いに等しい。長時間、徒歩で街をぶらぶらできる場所なんて、私が思いつくのはニューヨークのマンハッタンか、ワシントンDCくらいだ。
歩き回れる街は各所にあるのだが、2~3時間プラプラ出来る街という規模の場所が思い当たらない。見る場所が隣接していないとか、安全に不安があるとか、理由はいろいろ思いつく。
ニューヨークのマンハッタンや、ワシントンDCは歩き回れる街があるが、夜の一人歩きはする気にな葉ならない。私はきっと全米の何処でも夜間に一人歩きする気持ちにはならないのだ。自宅の周りの安全な住宅街のワンブロックさえも、やっぱり一人で散歩に行くことは決してない。
アメリカで私が一人で気楽に歩き回れる場所といえば、治安の良い土地にある昼間のショッピングセンター位なのだ。
アメリカ生活とコンビニ
日本とアメリカの暮らしで大きな違いには、コンビニがある。日本のコンビニは街のあちこちにあり、誰もが生活の中で活用するお店だ。その名の通り、多くの人の身近な便利屋(コンビニエンス・ストア)として、存在していると思う。
ちょっとした調味料や文房具、それに生活雑貨も揃っているから、買い忘れなんかのミスを補うために、ひとっ走りコンビニまで足を運んだりするのが日本のコンビニだ。
現代のコンビニは、多くの人の食生活を支える必要不可欠なお店であることは間違いない。
しかし、アメリカのコンビニというと、殆どがガソリンスタンドに併設されているお店であり、私はアメリカで一人で行動している時に、ガソリンスタンドのコンビニに入ったことはない。そもそも家から徒歩圏内にコンビニエンスが存在しないことが普通なのだ。
私がアメリカのガソリンスタンドコンビニにお世話になる機会といえば、夫と長距離ドライブでガソリンスタンドに寄った時、おやつの調達とトイレの利用をするくらいである。それ以外で考えると、コンビニは私のアメリカ暮らしに全く用がないのである。
一般的にとても安全な日本
私の親は日本の地方に住んでいる。親の住む家は最寄りの駅まで徒歩数分と近いが、夜7時を過ぎると家の周りを歩く人は殆どいない。それでも夜遅く、人通りが少なくなっても、私一人で最寄りのコンビニまで徒歩で行けるから日本は凄いと思うのだ。
親の家を訪問中に、夜の散歩がしたくなったら、流石に一人で散歩に出ることはないが、たまに家族の誰かを誘うことがある。母と二人、俊敏ではない年を重ねた女二人でも、一人じゃなければ夜の散歩中の安全を心配することは殆どない。
アメリカの場合、夜暗くなったら一人でなくとも、女性二人だったとしても私は夜道を歩こうとは思わない。男性である夫と夜道歩きをする場合さえ、夫妻で二人で共に神経質になって周囲へ気を配り安全に気を付けているくらいなのだ。
そう考えると、日本の治安の良さはとても素晴らしいと思うのである。
テクノロジーに感謝
家族・友人を「日本の一番恋しいもの」の一番に挙げない理由には、ラインやソーシャルメディアの進化が関係すると思う。現代では、日本に居る家族や友人といつでもラインでメッセージを交換し、気軽にライン通話も出来るからだ。
ソーシャルメディアを通し、友人達の日々の様子も見えたりする。実際に会っていなくとも、日々の様子が見えてしまうから、それほど距離を感じなくなってしまったのかもしれない。
私がアメリカで1年ベビーシッターをしていた頃は、インターネットはあったもののスマホはまだ世間に登場する前だったし、スカイプなどのインターネット通話さえもメジャーにはなっていない時代で、国際電話はプリペイド国際電話カードを購入して電話をするような時代だった。
ところが、今では気軽にいつでもメッセージでやり取りをして通話まで出来てしまうから、直接会えなくとも家族・友人に会えなくて寂しいという気持ちをそれほど強く感じないのかもしれない。
というわけで、私が日本の何が恋しいかと言われたら、「いつでもプラっと長時間に渡り、外を自由に歩ける環境」だと思うのだ。そういう日本の良い部分が、いつまでも同じであって欲しいと心から願うばかりである。