両親宅には15年ほど前から倉庫があり、その時にしまい込んだ物が長い間変わらずそこにある。しかも倉庫は1つではなく、2個もあるのだ。親のこれからの生活を考えれば明らかに倉庫は1つあれば十分だから、1つは知り合いに譲ることにして、意を決して中の物を片付けることにした。
捨てることを考えない父
父親は物が捨てられない人だった。使えそうな物がタダであればほぼ間違いなくそれらを家に持ってくる人だった。働いていた職場の事務所が閉鎖する時にも、色々な物を家に持ってきた。今だったらコンプライアンスやらで、そんなことは決して許されないだろう。
当時、父親は大企業が持つ小さな作業場兼事務所を一人で管理していて、その職場には本格的な業務用器具がいくつもあったのだ。閉鎖に伴って産業廃棄物として処理されるべきものが、こういう経緯で、我が家にだって不要な物が小物を含めて家の倉庫に落ち着くことになったのである。
父親がこの世を去った今、それらを片付ける時がやってきた。父親はことあるごとに、「俺が死んだら好きにしてくれ。」と良く言っていたが、つまりそれは、「俺が生きているうちは何もしてくれるな。」ということで、それは本当に身内からすると心底やっかいなお願いだ。
世の家族・親戚を持つ多くの人に、「オレ・私が死んだら好きにしてくれ。」というメッセージは本当に即刻改めて欲しい迷惑な意見なのだと伝えたいところである。
満タンスプレー缶ゴミ
倉庫のゴミである処分品の多くは、両親宅の近くにあるゴミ処理場に持って行けば数分で片付く。費用も10kg毎に百円だから、親の住んでいた地域でのゴミ処理は相当簡単なのだ。しかし、ゴミ処理場でも受け付けてくれないものもあるから厄介なのだ。
それは例えば、中身の入ったスプレー缶である。中身を抜いて空にしてしまえば缶ゴミになるのだが、中身が入っていると行政のゴミとしては受け受けられないというのである。
倉庫を片付けたら中身の入ったスプレー缶は30本以上あり、その半分は未開封のスプレー缶だった。10本以上が塗装スプレー缶で、それらは赤や黄色で、一体どんな一般家庭で赤や黄色の塗装スプレーが必要になるのか父親に教えて欲しいところだ。
そんな奇抜な色の塗装スプレー缶は恐らく、父親がその職場から持ってきたものに違いない。自宅で使う可能性が殆どない注意色の塗装スプレーまで家に持ち帰った父親に、未使用の塗装スプレーゴミ処理対応で途方に暮れる中年の娘の身になってくれよと思のだ。
有料中身有スプレー缶廃棄
私と同じように中身が入ったスプレー缶処理で思い悩む人はいるらしく、インターネットで中身入りのスプレー缶の廃棄を調べると、「1本770円で処理できます」というウェブ広告がててくる。しかし、1本の処分に770円もする。
10本頼んだら7700円、30本頼んだら2万3100円である。父親がタダで貰い集めたスプレー缶の廃棄に私が2万を超える費用を払うなんてどうかしている。それで結局、自分でスプレー缶全部を処理をすることにしたのである。
中身有スプレー缶廃棄方法
満タンに中身が入った大きな缶スプレーだと、1本につき5分程の処理時間は掛かるし、安全に廃棄する為には面倒だが、自分で1つずつ中身の入ったスプレー缶を処理することは可能だ。
作業場所は間違いなく屋外が良いし、ひらけた場所がいい。田舎だったら家の周りで作業が出来ると思うが、難しかったら人気の少ない公園や、川辺、近くにあれば海辺に行って作業をするのがいいと思う。
服装はポリエステル素材を避けて、出来れば綿製での廃棄してもいいような服を着て、ゴム手袋とマスクを装着して作業するのが良いだろう。衣類には液体ガスが付着することもあるし、塗装用スプレーの場合、ペンキが付着する可能性もある。
この処理方法は、私が良いと思った方法である。同じように処理する場合、それぞれが自己責任で処理して欲しい。とにかく気をつけることは、絶対に火気がないところで作業を行うことを徹底することだ。なにはともあれ、安全第一!
中身の入ったスプレー缶処理準備
- 45リットルゴミ袋 2枚
- 空き缶を棄てる袋(予備もあるとよい)
- 新聞紙
- 汚れを拭くウエスかキッチンペーパー
- 大人用オムツ 少量なら1個で可
- ゴム手袋
- マスク
- 綿100%の作業着
- スプレー缶ガス抜き機(下記商品参考)
中身の入ったスプレー缶処理方法
- 45リットルのゴミ袋を開き、底に新聞紙数枚をA4かB4位の大きさに折りたたんで入れる。
- 1の新聞紙を敷いたゴミ袋の中にもう一枚の45リットルゴミ袋を重ね入れる。
- 間に新聞紙を挟んだ2重に重ねたゴミ袋の中に紙おむつを広げ入れる。
- マスクとゴム手袋をし、ゴミ袋に手を突っ込んでオムツの上で作業する。
- ゴミ袋の中に手を入れ、スプレー缶をゴミ袋の中のオムツの上で穴をあける。
- ゴミ袋に手を入れたまま穴あけ器具をスプレー缶から外す。スプレー缶の穴はオムツに向け中身がオムツに吸収されるように穴の角度に気を付けて穴あけ器具を外し、勢いよく出るスプレー缶の中身を10cm程離してオムツに液を吸わせるために中身が出切るまで片手で缶を持つ。もう片方の手はゴミ袋の口の一部を手で持ち保持する。缶の中身は軽く振ってあげれば中身がスムーズに出ててくる。ゴミ袋の口は閉じずにほぼ開けている状態を保持する。ゴミ袋からガスを外に逃がしながら作業をする。
- 中身ができった缶をウエスか、キッチンペーパーで軽く拭いて、缶を空き缶廃棄の袋に入れる。このゴミ袋は残っている新聞紙を敷いた上においておくといい。万が一袋がやぶけても、缶に残った液体が漏れを新聞紙でキャッチできるうえに、漏れを確認できる。漏れていたら、もう一枚ゴミ袋をかぶせれば良い。
注:中身を空にした缶は空になった時、温度が凍り付く程に冷たくなる場合があるから十分に気をつけること。そして作業が完了しても、ゴミ袋を閉じずに20~30分はお茶でも飲んで休憩しながら残ったガスを気化させると良いと感じた。
スプレー缶に穴をあける缶の穴あけ機には、鋭利な器具が付いているのでケガには十分に注意が必要だ。不安を感じるなら、軍手の上にゴム手袋という対策をしても良いだろう。
火気に注意するほかに、静電気にも要注意である。換気が簡単そうだからといって、冬の風の強い日に作業するのは危険かもしれないから、その辺は十分に気を付けて、妥当な作業日を選定することも必要だろう。
気を付けて作業さえできれば、処理後のスプレー缶の中身はオムツと一緒に燃えるゴミとして廃棄できるし、缶は缶ゴミになる。まぁ少々手間ではあるがそれほど苦痛もなく、中身の入ったスプレー缶を処理できるのだ。
ライター用補充燃料のスプレー缶も処理したが、十分に気を付ければ危険そうなスプレー缶も同じように処理することができた。
「危険そうで危ないし、どうすればいいのか分からん」と、業者に委託したくなる気持ちはわかるが、やってみれば結構簡単に中身の入ったスプレー缶は処理できるのだ。
私は約30本のスプレー缶を1時間ほどで片付けた。大量だったからオムツは4つ、液体吸収の為のゴミ袋も2セット使用したが、それでもこの頭痛の種が1時間ちょっとで片付いたのだから結果オーライである。
中身の入った大量のスプレー缶の廃棄処理にしばらく悩んだが、やり方さえ習得すれば、意外になんの難しいことはなかったのだ。
我が家には父親が残した介護用の大人用おむつがまだ大量に残っている。困っている友人がいたら、遊びに行った時に気軽に中身の入ったスプレー缶の処理をしてあげたいくらいである。
まさかこんなふうに残った介護用大人オムツが再度役立つ日が来るとは考えもしなかった。