昨年イギリスで友人の結婚式があり、ついでにイギリスの田舎にも滞在した。
その旅の間イギリス文化にある柔軟な場面に遭遇し、イギリスはやはり日本とは違った文化の上に暮らしがあるんだとしみじみ感じたのである。
訪れたイギリスの田舎町はCotswoldというエリアで、私達夫妻は1週間程そこでのんびりとした毎日を過ごした。
雨が降る日もあったが、秋で比較的天候が良い日が多く、毎日のように毎日散歩をした。
私が特に気に入った散歩道はMoreton-in-Marshという街にあるArboretun walkという散歩道である。
グーグルマップの切抜き画像の中央に緑の点線がそれであるArboretun walkだ。町中からスタートし、地図の左上の方にあるCotswold Falconry Centreというと場所まで片道30分程の道のりを往復した。
Moreton-in-Marshで寄り道するならBlack Bear Innっていうパブがオススメだ。おいしい食事ができるダイニングもあるし、パブのほうでビールを飲むのも良い。 http://www.blackbearinnmoreton.co.uk/
イギリスにはフットパスという歩く道がいたるところにある。
このフットパスがある場所は個人が土地の所有者であっても歩く者には誰でも通行する権利が与えられていて、誰でも散歩が出来るようになっているらしいのだ。
私たちが訪れたこの片道約2キロ半の散歩道はとても自然が豊かでイギリスの自然の美しさを楽しめる場所であった。
散歩道の中心部では沢山の放牧された羊を見ることができ、それぞれが自由に食べたり寝たりして過ごしている中を通り抜けて歩く散歩道は何とも言えない気持ちで心を満たしてくれるのだ。
道の端々には羊や動物を守るために設置されたゲートがある。自由に開けて侵入していいのだが、開いたゲートを閉めることを忘れないようにしよう。
このイギリスに張り巡らされたフットパス、土地の所有者がいても誰でも歩いて通行する権利が与えられているというのは私は素晴らしいルールだ。こういったスマートなルールが暮らしを豊かにするのではないだろうか?持っている者が持っていない者と分かち合う素晴らしい例だと思う。
土地の所有者も訪れる者も同じようにその豊かな自然を楽めるところがいい。こういう風に全ての人の暮らしが豊かになる行政ルールが日本社会にももっとあるといいのにと思うのだ。
そうはいっても現代のイギリスで新しいルールを作るときに、同じようなコンセプトを取り入れようとしたら、もの凄い反発があり所有権の権利についてひと悶着おきるのだろう。
イギリスの田舎町コッツウォルズを後にし、ロンドン市街に移動した後に私達夫妻は立て続けに「こんなのありなんだ。」という状況に遭遇する。
予期しないトラブルがあってもはイギリスでは沢山のトライアンドエラーで乗り越えて100点を取れない解決策でも良しとして進んでいるんじゃないかと、コッツウォルズのフットパスの件を思い浮かべ考えてるようになった。
ロンドンで私達夫妻が滞在したのは世界的チェーンホテルとして名の知れたミドルクラスのホテルだったが、ホテルは改装中でなんと通常のエントランスやロビーがなかったのである。
ホテルがあるはずの建物の前に到着すると、ビルの周りに組まれた足組がポッカリ空いた部分に入り口と書かれた札が掛かっている。タウンハウスのドアの上部にはホテル名が書かれた簡易看板があるから、やっぱりそれが私達の宿泊するホテルだ。
そのタウンハウス風のドアを開けて入ると、そこには仮設のホテル受付デスクがあったのだが、明らかにその場所はひとつの客室なのである。客室ベッドを取り払って、壁を壊し外へと続くドアを壁を壊して取りつけ、ホテル受付業務の為の簡易受付デスクを置いてた。
日本では到底考えられない対処であると思うのだが、リノベーション工事をスムーズに短期間で終わらせられないイギリスの事情が生んだホテル運営対処法なのだろう。
ホテルに到着した時は正直ちょっとビビったが、宿泊した部屋の造りは良かったし、清潔でリノベーション中といいつつも騒音もなく、ロンドン中心部に位置した安心して宿泊できる便利なホテルであった。
ロンドンという大都市の世界的に有名なホテルチェーンだっただけに、私はリノベしながらホテルを運用していることに驚いたが、こんな風にフレキシブルに対応していれば多少工事が遅れてもそんなに問題にならないのだろう。
この運営方法からもイギリスの状況に合わせて行動するというフレキシビリティを感じた。
もうひとつの予期せぬ出来事は、大型バスでトラブルに見舞われた時のロンドンの人たちのフレキシビリティである。
私たち夫妻はキリスト教教会で行われた友人の結婚式に参列した。結婚式後は、結婚したカップルが手配した大型バス2台にゲスト全員が乗り込み披露宴会場へ向かった。
ロンドン都心部にある披露宴への道のりは友人代表がナビをしながらバスの運転手を導いていく。もうすこしで披露宴会場と思った頃に問題は発生した。
ロンドンには道幅の狭い道路があちこちにあるのをご存じだろうか?大型バスが通るには全く向いてない道路が多く、住宅が並ぶ道幅の狭い道路の両側にはびっしりと路駐の車が並んでいるのだ。
私たちゲストを乗せた大型バスは乗用車を想定したナビに誘導され、そんな細い道路を突き進み道路の終わりにあるカーブを曲がると目的地という場所まできて、大型バスが曲がり切れないというトラブルが起きてしまった。
路肩両側に路駐車が所狭しと並んだ細い道路数百メートルの先にある曲がり角でのトラブルで、Uターンする場所なんてないから、この2台並んだ大型バスは仲良くこの道をバックで大通りまで戻ったのだ。
2台のバスは路駐した両サイドの車を上手に避け、細い道を数百メートル後退し、バスから降り大通りの車を誘導する人のサポートを受け、バックのまま片側2車線はある大通りに戻ることが出来た。
かなり交通量のある大通りだったが、普通の人たちが難なく取り仕切って大型バス2台を大通りに誘導し、ゲストを披露宴会場へ送り届けることができた。
このトラブルを通し、私は2つの点に対して驚いた。
まず誰もバスの中で文句を言わなかったのである。「やっちまったの誰だよ!」みたいなブーイングもなく、バスが大通りに戻った時には全員で拍手をして互いに喜びに沸いたひと時となったのである。
大通りを行き交う何十台という全車両のドライバーもこの大型バス2台の状況を理解し、クラクションならすでもなく、割り込むこともなく、多くの車に対して青信号であるのにも関わらず、停車しバスが事なきを得るのを待ってくれたのである。
東京の中心街でこんな状況に陥った場合、恐らく警察官がどこからか10人程駆けつけて、クラクションが鳴り響く大混乱の中、警察が交通整理をして問題解決に時間を要してしまうのではないだろうか?
私はこのバス騒動から、イギリスに対して「柔軟性のある社会と、大人な人たちである」と感心した。
イギリスでは思い通りにならないことが日常的に色々あるようだが、皆それらとうまく共存しながら生活しているように見えた。
私は良い部分しか見ていないのかもしれないが、何か不都合があってもショックを受けて仕方ないと諦めずに、どうにかしようと対策に取組む姿勢がそこにはあるように見えた。
私も比較的逆境には強いタイプだとは思う、しかし諦めてしまいたいと現実逃避を妄想する癖がある。
そんな無益なことをしている間にさっさと対処策を考えて不都合を乗り越えられるような者になりたいと思ったイギリス旅行であった。
イギリスならではの柔軟な暮らしを見習うベネフィット
- 問題があれば解決策を探せばいいのだ!と取り組む姿勢には希望がある
- 解決策の為に周囲も妥協し、協力してくれる環境が助けてくれる
- 100点満じゃない解決策でも機能すればよいのだと勇気を貰える