事務職正社員として2年半の雑務担当をしながら、「できるシリーズ」に指南してもらいPC基礎を習得した私の次の仕事は、OA操作業務担当の派遣社員だった。
派遣社員はスキル持ちと経験者が強い
派遣社員として仕事を探す場合、PC操作が出来て事務経験者であれば、即戦力になるので仕事が直ぐに紹介される場合が多い。
私が派遣社員を始めた時の目標は、「もっとPCを使えるようになる」だったから、派遣社員需要が多くある、OA操作の事務職は渡りに船だったのだ。
こうして再度、私は仕事を通してお金を貰いながら自分のスキルを伸ばすチャンスを得た。
事務職の正社員を辞める前に、次の仕事も正社員枠で探してみたが、良い条件で皆が憧れるような会社に正社員で入るのはこの時点の私の経歴とスキルではあり得なかったのだ。
だから私は雇用形態に拘らず、そこそこ給料の良いOA操作といわれるPC操作業務中心ですぐに仕事を開始できる道を求め、事務系派遣社員として職探しをすることにした。
(2000年頃の一般OA操作業務の派遣社員の時給は大体1600円前後が主流の頃である)
派遣社員も経歴次第で転職が有利になる
この派遣社員で貰う月額の給料は、私が正社員として働いていた時の給料より高かったし、正社員から派遣社員にステータスがダウングレードしてしまっても、キャリア的に言えば実質的に状況はアップグレードしたと言える内容だった。
仕事の良し悪しは雇用形態だけではない。給料、仕事内容、働く環境、その他のベネフィットに加えて将来の可能性まで含め総合的にみて判断しないと意味がない。
家を買い住宅ローンをくむのであれば正社員ステータスの方が断然良いが、派遣社員でも3年は同じ仕事を継続できる可能性が高い。
正社員で働いても3年以内に転職する人が沢山いるのだから必要以上に雇用形態だけにこだわる必要はない。転職のチャンスを得た時に、自分が2-3年は継続して働ける証明さえ出来ればいいと思うのだ。
高卒者にとって、派遣社員の良い所は学歴が全く重視されない部分である。どんな高校であっても高卒であれば問題なく仕事は紹介されるし、大卒でも高卒でも時給は同じなのだ。
派遣は何よりもスキルと業務経験がものを言うのである。仕事の経験とスキルさえあればキャリアを積む道として高卒者には派遣社員は意外にもベストな道に思える。
派遣社員の職を得るまでの道のり
仕事の紹介過程だが、派遣会社から仕事の案内があったからといって、すぐに派遣先での仕事が始まるわけではない。
法律的には違法だと思うが、簡単な顔合わせという形で面接を行い双方で合意できてから、正式に派遣社員として契約書が交わされ派遣の仕事が始まるのである。
残念ながらこの顔合わせで仕事を断られる場合もあるらしいが、身なりを整え、質疑応答では明るく聞かれたことにハキハキ答えることが出来れば殆ど断られることはないと思う。
派遣社員を雇う企業は何社かの派遣会社に人材を要請していることもあり、採用過程で競争が発生している場合もある。
それでも派遣社員の仕事争奪戦は、正規雇用の就職レースよりも相当楽なレースであることは間違いない。早い者勝ちな傾向もあるから、出来るだけ早いうちに面接へ繋げてもらって即仕事を開始できるアピールをすれば、仕事を得るチャンスが高くなるだろう。
派遣社員として働き出して知ったのだが、他の派遣社員の中には、大学卒業後にそのまま事務系の派遣社員として働く人もいた。そういう人はマイクロソフトのマウス検定を取得し、仕事の経験がなくとも問題なく仕事を得ているようだった。
私のOA操作業務の派遣仕事探しは、過去の合計3年以上にわたる事務職の経験と、基本PC操作スキルで問題なかったらしく、派遣登録にいったら直ぐに仕事が紹介された。
派遣スタッフ登録時には、一般常識問題のようなテストがあり、PCの入力テストもあったが、それらをある程度クリアできて、事務職経験が過去にあれば問題なく派遣社員として派遣先を紹介してもらえる仕組みになっているのだろう。
初派遣社員仕事は外資系大手製造業社
派遣会社でスタッフ登録を終えると同時に、私は直ぐにお仕事の紹介(提案)を受けた。
ワクワクしながら聞いた仕事の紹介先は、素敵な響きのする「外資系大手のコンピュータ製造会社でのOA操作業務」だった。
PCスキルをもっと伸ばしたいと思う私は、例え単調な仕事しか任せてもらえなくとも、コンピューター会社で仕事ができるってだけで、この仕事を得たチャンスに期待した。
そして私は無事、顔合わせという名の面接を経て無事に派遣社員で働けることになったのだ。
私が派遣された会社は、誰もが知っている外資系コンピューター製造会社である。新卒で入社するのは相当難しいだろうが、派遣社員としてなら、かなり簡単にその会社で働けるのだ。
部署とポジションによっては社員と同じ内容の仕事だって経験できる。スキルと経験を伸ばしたいのであれば、派遣でしっかり働くことでキャリアの階段を上ることもできるのである。
その職場で派遣社員として働いた頃、私は20代前半で新卒採用の大学院卒の人たちよりも年下だった。
当時の私は、見た目からしても社内で断トツで若く、大学に行っていない分、周りの派遣社員の人よりも必然的に若かったのだ。当時会社で撮った写真を見ると、確かに自分は周りの人より相当若かった。
職場で私は誰よりも若く、ピチピチだったこともあり、私は沢山の人に可愛がられて得をした。そういう部分で確かに若さは役に立つのだ。
しかし、人より若いことは別に必須ではない。学ぶことに素直さと感謝の気持ちさえはっきりと示して仕事をすれば、若くなくともそれなりに愛されキャラでスムーズに仕事はできる。相手が誰であれ、学ぶ姿勢を示し、可愛げを持って教えを乞うのである。
勝手に引け目を感じる必要はない
派遣社員で働いていると、「社内のどの社員グループに属しているか?」というような社員階級が気になるかもしれないが、そんな取るに足らないことは何も気にせず熱心に仕事するのが一番だ。
高卒であること、派遣社員で働いている状況からいって、自分に対し誰からも期待されない環境で働くことになるだろう。しかし、その環境を逆手に取って努力して仕事をすれば得をすることが多かった。
期待されていないことは実はお得な状況なのだ。「期待されている仕事を当たり前にやり、それ以上を進んで相談してみたりと、愛嬌の振りまきができていたら派遣社員生活は安泰」なのである。
派遣社員でも社員の仕事が出来る
派遣社員は一般事務的なことしかやらないと思っていたが、驚くことに初のOA事務派遣で、私はかなり専門的な知識が必要になる仕事を担当することになった。
私が働きだした時、部署にいた正社員の人が移動になり、私がその穴を埋めることになったのだ。そして、この仕事が私を「キャリアわらしべ長者」の道に乗せるきっかけだったのだ。
任された仕事ははっきり言って、一般事務なんかではなく細かいことを言えば、今ではきっと派遣契約違反に当たりそうだったが、当時そんなことは誰も考えるわけもなく、私は喜んでその仕事を得た。
派遣社員は契約書に書かれた仕事以外は基本やらなくていいし、法律的にもやってはいけないといわれているが、その勤務先や派遣社員によって仕事を過大解釈して幅広く仕事することはよくあるのだ。
都合よく過大解釈して、自分のキャリアにプラスならその大変な道を選んだっていいのである。
経験を積みたいとか、頑張りたい人という人は、私がやったように過大解釈をして仕事する派遣社員も存在するし、20年ほど前は間違いなくその辺の社会認識もそうとう緩かったと思う。
スーパーコンピューターの基本構成を学ぶ
この派遣先で私が担当した業務には確かにOA操作業務もあったが、その範疇を大きく超える仕事も含まれていた。OA操作業務とは非常便利な業務名である。PC操作を含む仕事なら、過大解釈し放題だ。
私の持つコンピューターの基礎知識やデータアナリストの道に繋がるデータを纏める知識は、この仕事を通して育てた。
私が担当した仕事は、「金額〇〇以下の案件であれば、見積作成から受注処理まで一貫して処理をしても良い」という総括的な営業の便利屋仕事だったのだ。
通常は営業担当者が見積りを作成し、その見積を元に業務部が受注処理を進めるという、明確な分業が存在したが、効率化のために受注金額に制限を設けて、処理を簡略化しようという試験的ポジションだったらしい。
しかし、アサインされた元営業職員の2人の内、一人がそんな仕事はお断りと、さっさと移動をしてしまい、私はその欠員の穴を埋める要員としてアサインされたのである。
その会社では、個々のコンピューター製品に対し、優秀なエンジニアが製品リリース時に総括的設計仕様書を準備する。そこには製品販売後の修理や増設時の交換部品や、拡張部品と拡張ルールが併記されていた。
私の仕事のひとつとして、この設計仕様書と言われる教科書を読み解きながら、担当営業から依頼されたシステム拡張用の見積を作り、受注処理するのが仕事だった。
私は客先にある既存のシステムを調べ、仕様書通り合う部品を探し、受注処理まで行う仕事を通して、コンピュータ構成の基礎を得ることができたのである。
客先にある既存のシステムを調べ、システムの拡張案を作成するのには時間がかかった。システムの制約を確認して、探す部品が廃盤になっていれば入手可能な後継部品を探すこともあった。
時間が経つにつれ、担当営業は私の仕事を評価してくれるようになり、「受注業務はしなくていいから、見積作成だけやってくれ」という人も出てきた。
見積作成だけなら「受注処理が〇〇円以下のみを処理可能」という制約を無視できるし、時間が掛かり面倒な調査業務は私にやらせ、営業は出来上がった見積の答え合わせ構成チェックを担当エンジニアに依頼すればいいだけなので、デスクワーク時間を減らすことができたのだ。
新規の依頼を受ける度、私は都度、客先の既存システムの構成を確認し、仕様書を読み漁って拡張ルールを確認しながら増設可能部品を積み上げ見積書を作った。
私は学生時代に学校の勉強は全然やらなかったが、「コンピューターの知識をもっと得たい!」という情熱があったからシステムの勉強はかなり率先して取り組めたのだ。
派遣社員の私にはノルマなんてなかったし、システム構成を調べて見積を作る仕事は、通常OA操作の派遣社員がやるような仕事ではなかったが、好奇心と、お金を貰いながら学べるから、私のやる気スイッチはずっと入っていたのである。
苦労して得た知識は役に立つ
周りからは「見積作成なんて自分の仕事じゃないんだと断っていいんだよ」と言う人もいたが、私にとってはお金を貰いながら貴重な知識を得ることができる棚からぼた餅な仕事だったと思う。
私がこの仕事で学んだ知識は、その後の私のキャリアでも確実に役立っていることは間違いない。
キャリアの為に学ぶ機会を広げる
この派遣の仕事を始めてから、私は自分の趣味として、自作PCにも手を出し、本を買って学習もした。コンピューターの基本概念は機械が大きくても小さくても基本は同じなんだと理解ができた。
大雑把にハードウェアを分かり易く説明したウェブページ
情報寺子屋のハードウェア説明ウェブページ
私にはこの仕事をするのには十分な基礎知識なんてなかったし、当然分からないことだらけだったが、一緒に働いた社員さんは聞けば丁寧に教えてくれたし、私は社内のあちこちに拠り所となる知り合いを作って助けてもらった。
社内の自分の属性がたとえ派遣社員だったとしても、仕事を始めれば正社員も、契約社員も、派遣社員も関係なく仕事をさせてくれる会社はあるのだ。
自分の給料が正社員と同等に貰えないから頑張って働く必要なんてないという人がいるが、それは間違いなく自分の機会の喪失になる。知識と経験を積み、その後の職探しでリターンを得ればいいだけの話である。
自分の為に、仕事を通し経験が積める場所が与えられたら、最大限経験を積むことをオススメする!
毎日の勤務時間に対して賃金が払われているのだし、働き始める時にそれに合意していることを忘れてはいけない。後はその仕事経験を最大限有効活用し、経験を積み、将来の投資とすればいいのだ。
お金がない人が投資する方法としては、仕事を通して経験を積むのが最適な方法ではないだろうか。
給料が払われている勤務時間そのものが、自己投資の機会になっているのだ。
大企業で仕事をする懸念点
実は働く場所が大企業であればあるほど、担当する業務が限定的になる可能性は高い。
私は幸運なことにこの派遣社員業務で、たまたま広範囲にわたる仕事を経験することができた。
大企業にはひとつのことを専門にやる部署が沢山存在しているが、私は特別枠で準備された広範囲をカバーする役割に配置され、多岐にわたる仕事をさせてもらえて本当に運がよかったのだ。
同じ部署にもっと仕事をしたいと思う人が少なかったのも私には幸運だった。
そのおかげで私はこの派遣社員時代に、働く部署のデータを纏める仕事をも担当することになった。部署の業務ボリュームを計るための資料を作成する仕事が私に回ってきた。
部長が「誰かやってくれんか~?」と助けを求めていた時、私は残業代欲しさにデータを扱うスキルもないのに引き受けたのである。「指導してくれればやりますよ」と手を挙げた。
ここで私は上司からエクセルのピボットテーブルを習ったのだが、これが私のデータアナリストとしての道の大事な一歩だったと思うのだ。
この派遣社員として仕事をした約2年半の間に学んだ知識は、私にとってプライスレスだ。
優秀な社員さんから実務を通して色々学べたことは、職業訓練校や、スクールには通って学ぶより何倍も効率的だったし経済的だったのだ。
私は派遣社員の契約内容を相当に過大解釈して、幅広く仕事をさせてもらい、雇用側も私もハッピーだったから、細かいことを派遣元に報告をしなかった。派遣元も双方に問題なければそれで問題なかったのだろう。
どんな内容の仕事に派遣されるかは運次第だが、私が過去に派遣社員として働いた5社では、どの会社でも学ぶことは沢山あった。
とりあえず、どこに派遣されたとしても、まずは一生懸命努力してみるのがいいと思う。
派遣社員で働くデメリット
- 雇用が不安定 経営悪化時には派遣切りの可能性が高い
- 派遣法により3年以上同じ仕事に従事できない
- 決められたことしか仕事させてもらえない可能性が高い
- 給与は時給で、賃上げを期待できない
それでも派遣社員を通して、職務経歴を強化して、未来に可能性を繋げることは可能である。