会社にとっても上司にとっても良い会社員を目指し、私は努力し、手広く仕事をする社員であった。しかし、それは無計画で無謀な働き方だったということを私は引継ぎの時を迎え思い知ることになったのである。
誤った会社員の働き方
私はそもそも仕事をすることが好きである。毎日毎日会社員として8時間働くのは殆ど全く苦ではない。周りからは「ワーカホリック」とか、「趣味は仕事」だと認定をうける始末だが、私の働き方を見たら当然なことだっただろう。
「何でもかんでもホイホイ依頼を受けてるわけではない」と思いつつも、私は頼まれた仕事内容が自分の範囲内だと判断したものについては引受けていたし、多くの人のシステムの質問や相談にも乗っていた。
外資系のIT系の職務だと多くの人は数年の内には転職をしてしまう。しかし、私は同じ仕事を長年続け、気が付けば一人で相当な仕事量を背負い、多くの知識抱え他人の仕事をサポートすることになってしまっていたのである。
ジョブホッパーと働く難しさ
理想的な会社員の仕事の仕方は、役割の違う社員同士がお互いの成長を助け、相互的に能力を伸ばすことだろう。しかし、共に働く人がそのような成長を考えない、のらりくらりと仕事をするジョブホッパーだったらどうだろう?
私は今の仕事を担当した当時、ITサポートとして存在していた同僚の仕事を奪ってしまったことがある。その担当者はまるで伝書鳩のようなことを私とプログラミング開発者の間でしていただけだったのだ。それで上司と相談し、私はそのITサポートの割り振りを取っ払ったのである。
長い目でみれば、そのようなことは絶対にしないほうが良いのである。なぜなら、一度撤廃した人員を再度与えられることはほぼないからなのだ。たとえジョブホッパーで、働きに成果が見えないにしても、その人をやる気にさせるような努力はやはり長い目でみたら必要なのだ。
ITサポート担当者に、システムの要件を把握してもらっておけば、自分以外にもう一人はシステム要件について知識を持つ人が常にいることになるのだ。そういう知識を2週間や1か月で深く得ることが難しいからそこ、日頃から何人かが知識を蓄積し続ける価値はある。
危機感のない薄っぺらい達成感
私は長年に渡り、手元にある仕事を次から次へと進めたい欲求が大きくなり、手伝ってもらう付加価値がないと思うと、私はサポートは切り捨てて、自らの手を動かして働いた。
自分中心に物事を考え、多くの仕事を一人で処理できるように効率化をさせて、他人に頼る事を必要とせず自己完結してしまった。そして私は、一人で結果を出していると勘違いをしてしまっていたのである。
本当に仕事のスピードを追い求めるならしっかりと仕事を他の同僚と共有し、チームで仕事をする必要があるのに、私は1人であれもこれも出来ると目の前の小さな成功で腹を満たしてしまっていた。
私は人の仕事を巻き取るリスクについて全く考えず、最終的には自らの足をすくわれることになるとも知らずに長い間突っ走ってきたのだ。
1人で仕事しすぎて属人化
私はひとり優秀選手になりたかったわけではない。次々と出てくる課題をサクサクとやっつけて仕事を進めることに没頭しただけだったのである。
褒められずに育った私は、仕事で褒められ待遇や給料が上がることに対し、すっかり味を占めてしまった。今の会社はマネージャーになるとボーナスの支払い率が10%も上乗せされると知ったときは、更に仕事をしてマネージャーに昇進し、ボーナスの増量にも成功した。
しかし、人の仕事を巻き取って、何年も一人でコツコツ残業しながら築いてきたのは私の記憶に頼る属人化した脆い仕組みだったのだ。
そうしてある日突然やってきた担当替えは、途方もなく悲惨な引き継ぎとなってしまった。膨大な量の仕事を引き継がなくてはいけないのに全く現実的な量の仕事ではないのである。しかし、本当に泣きたいのは私から仕事を受け取った同僚達に違いない。
最低限の引継ぎだけにする
与えられた引継ぎ期間は1か月である。1か月というのは基本的に一般的な引き継ぎ期間であるとも思うが、それは比較的長めでさえあるだろう。しかし、私の抱える仕事の量はとても1か月でさばけるものではないのだ。
苦肉の策として最終的に採用した仕事引継ぎの攻略方法は、「ザ・切捨て」である。
現実は甘くない。私は始め、1から100まで全てを引き継ぐつもりでスケジュールを組もうと思ったが、予定表に埋めていくとすぐにそれは非現実的だという状況に気付いたのだ。結局、切り捨てて切り捨てて、ほんの一部を引き継ぐことしか出来ないと悟ることとなったのである。
私の引継ぎ相手は天才の部類だったが、それでも新しい職場で人やシステムの名前、取り扱うデータの項目名を覚える段階では仕事を覚える難易度は高くなる。細かい説明はどうせ忘れてしまうだろうからと、大雑把にルーティンの仕事を乗り越えられる手順だけ引き継いだ。
引継ぎを開始し、改めて私は自分の抱えてた仕事の量に自呆れたが、その仕事を引き継いでもらえて本当に良かったと思う。逆の立場だったら私には受け止めきれなかったに違いないと思ってしまった。
引継ぎ者には困ったら、『コレ引継ぎ受けてません』と言えばいいのだと教え、言い訳に私を使ってくれとお願いをした。
私の担当した仕事はデータ関係である。仕事に慣れてきたときに少し時間をかけてデータファイルを読み解けば分かることは、あえて引き継ぎ時間を取って説明せずにすっ飛ばしたのだ。
直ぐに必要になる部分だけを引継いで、残りは可能な限りヒントをまとめた知恵袋ノートにまとめた。この時点で口頭で教えても忘れてしまう可能性は高い、それなら手掛かりが掴めるメモを残した方が残された人にとって助けになると思ったからである。
そして、あっという間に私の引継ぎ期間は終了し、引継ぎ内容は不完全燃焼のまま私はその職務にサヨナラをすることになった。
引継ぎの1か月間、私は寝る間を惜しんで出来る限りのことをした。その期間、最終着地点を考え、計画を変更し、やれることはやったのだ。私はもう十分やり切ったのだと、後ろは振り返らずに進ませてもらうことにしたのである。
今回の私の仕事の反省点
- 同じ仕事を共有する仲間、カウンターパート、チームを作らなかった
- 人を信じ、時間をかけて育てることの大切さを理解できていなかった
- 世間で言われる仕事の属人化で典型的な悲惨な例を作り出してしまった
理想的な働き方
- 半年ごとにいつでも2~3週間気楽に休暇を取れる状態にする
- 複数人で仕事の共有化をし、各自の仕事を完全に回せる状況にする(専門職含)
- 毎日の仕事に少なくとも1時間遊びの時間がある状態にする (突発作業/手伝い/学習用)
ダメダメな働き方
- バケーション中でも仕事をして会社の仕事が回るようにする
- 毎日残業をしないと日々の仕事が終わらないほどの仕事を抱える
- 同じチームにワーカホリック&社畜ライフを送っている人を持つ
結局の所、ひとりで頑張っても、社畜といわれるような働き方でどうにか仕事を回す人は危機感不足といわれても仕方がないかもしれない。自分ひとりの力では環境を変えることは難しい部分も大いにあるからそんな時は、無理をしすぎず新しい道を自分から探しに出るのも良いだろう。
所詮はただの会社員なのだ。出来ることは一生懸命やって、自分の為に賢く働くことを覚えよう。