アメリカで腰を据え暮らしてみてつくづく感じるのは、日本の家に比べてアメリカの家は大きいのだが、その家が建つ敷地もでかい。中流階級の上の方の人達はアッパーミドルクラスと言われ、その層の家はまた更に大きく、維持する費用も相当なものだ。
規模が違うアメリカの戸建て
アメリカの暮らしで、日本との経済力の違いを感じるのは家である。戸建ての並ぶ住宅街には様々なタイプがあり、日本の家とさほど変わらないような小ぶりの庭とコンパクトな造りの新興住宅もあるが、大きな戸建てに大型犬が走り回れるような庭があるケースも珍しくない。
古い住宅街だったりすると、広い敷地に家が建てられている場合が多く、映画「フォレストガンプ」で、フォレストが家の庭で芝刈り機を走らせるシーンがあるように、中流家庭の家でさえその規模の庭がついているのは普通のことなのだ。
私がベビーシッターとして滞在した家は、大都市部から車で1時間程の場所にあり、3エーカーの土地に家が建っていた。1エーカーは約1200坪で、計3600坪である。敷地の広さは、日本の田舎にある小学校の校庭程の大きさ程だ。
安くないメンテナンス
同じ地区内であっても、個々の住宅エリアによって雰囲気が結構変わる。高級感のある古い住宅街だと、0.5~2エーカー程の土地に、一定の基準を満たした見た目の家々が並ぶ。このようなエリアの家だと週1で庭師屋さんを雇っている場合が多い。
0.5エーカー程の土地の場合なら、庭師屋さんはチームで毎週やってきて、30分程の間に芝刈り、落ち葉などの片付け、庭にある木々のメンテナンスをする感じだ。
家にプールがある場合だと、プール師さんも週1で雇うことが多い。プール水の循環器チェック、水質調整、それに必要に応じた処置をしてもらうのだ。プールのメンテナンスは意外に難しく、天候によって水質が急変したりするからプール師が必要になる。
この規模の家だと、寝室が5~6部屋あることも珍しくない。ほとんどの寝室にシャワーとトイレのフルバスルームがついていることも多く、掃除だけで骨が折れる。というわけで、大きな家ではメイドサービスも隔週位でお願いしたりするのだ。
このようなウィークリーサービスを依頼するような地区は上流階級に食い込んだ層だろう。全米で見た場合、大きな土地を持つ住宅エリアでも、殆どはその家に住む人自身で草刈りなどをメンテする家の方が多く、私がベビーシッターをした家も自前でメンテをしていた。
ウィークリーで人を雇ってメンテナンスしている住宅街は、裕福なエリアということになると思う。
かさむ設備のメンテ費用
大きな家のセントラル空調だと1機では足りず、複数個の空調機が常に稼働している。この空調機も、日本のエアコンと同じでいつかは故障する。大体15~20年位くらいは稼働するらしいが、新規に入れ替えると日本円にして100万円は軽く掛かるからやっかいだ。
高級志向の住宅キッチンのガスコンロだとバーナーが5口以上あり、オーブンがふたくち付いているような機種が多く、高級品でこちらも故障すると厄介なのだ。このように大きなコンロを導入すると、それに見合う換気扇も大型で高級な物が多く、いちいちお金が掛かるのだ。
日本でも定期的に外壁修繕をすると思うが、アメリカでも外壁の木造部分は10年に1度は塗装を加える必要がある。敷地内には車のドライブウェイがあり、コンクリートが敷いてあり、そのメンテも必要だ。
日本の家で必要になるのと同じような修繕がアメリカの家でも必要になるから、毎月のランニングコスト以外のことも考えておく必要がある。しかし、とにかくアメリカの家や土地はビッグサイズだから当然掛かる費用もビッグになるから怖いのだ。
豊かな暮らしをする人達
庭師屋さんを雇う家というのは、アメリカのアッパーミドルクラス以上になるだろう。この辺りの家庭は、金銭的に余裕があるグループである。そうじゃないと、庭師屋さんを雇うような家で暮らすのは正直無理がある。
家が大きければ大きいほど、光熱費も掛かる。光熱費に加え、毎週の庭師屋さんと、プール師さんへの支払いだけでも毎月日本円にすると20万円は掛かるのだ。
このような規模の家がアメリカにはゴロゴロしているから本当に驚く。それだけ豊かな暮らしをしている人達が多いということでもあるのだ。
日本では建売か、宅地整備した戸建用の土地を購入し、家を建てるのが基本だが、アメリカではガスも下水もない土地に家を建てることも珍しくない。
お金持ちは広大な土地を購入し、家を建てる時に専用の私道をも作り、生活に必要なライフラインを自分で費用を支払って引き込む。お金に余裕のある人達は、プライバシー保護のためにも、そのような環境を望み、土地を切り開き家を建てるのである。
アッパーミドルクラスの経済力
アメリカでは、アッパーミドルと言われる人達の生活でさえ、日本の大企業の役員クラスの人達よりも豊かな暮らしをしているよう見える。私個人の意見だが、日本の暮らしの中で、大企業の役員クラスの人に対し、凄い金持ちだなと思うことは実はそれほどなかった。
日本で金持ちだと思われるようなことは、アメリカのアッパーミドルと言われる人達もだいたいやっている。新車のポルシェに乗っていたり、素敵な家に住んだり、別荘を持ったりということだ。
日本の金持ちと言われるような人達の層は、アメリカだとアッパーミドルクラス当たりを指しているようなものだろう。だから、アメリカの上流階級の人達は、日本人の感覚から言うと、桁外れな経済力を持つ超お金持ちということになる。
1%と言われる上流階級
アメリカの裕福なグループにも階級があるようだ。私達夫妻は、アメリカの1%と言われる富裕層の人達と出会うことがあるが、そこまで行くと全てが桁違いなのである。
私がアメリカで出会った裕福な人に、グランドピアノをポンと買ってしまうような人がいる。しかし、その人は、出掛けるのにプライベートジェットを利用するかで裕福さを計っていた。仕事ではなく、完全な私用でプライベートジェットに乗るかどうかだ。
例えば遠方の友人の結婚式に参加するのに1%の富裕層は、プライベートジェットに乗って移動するのが普通だったりする。
そこまでの富裕層の場合、祖父母が成功した代々金持ちである場合が多い。それ系の家では資産を守る術を心得たお抱え弁護士などが付いていて、資産運用さえ誤らなければ代々富裕層としての暮らしが続くのである。
このアメリカの1%と言われる富裕層の人達は、リゾート高級ホテルかと思うような家に住む。やはり別荘も、リゾート高級ホテルのような建物なのだ。この規模の家の場合、メンテナンスに掛かる費用も相当なものだろうが、この層が生活の固定費について気にすることは皆無だろう。
上昇志向の社会
この富裕層の生活が、アメリカンドリームの象徴であり、富裕層出身でなくとも、自分で運営するビジネスがうまくいけばアッパーミドルクラス以上の層に食い込むことが出来る。雇われだったとしても良い仕事に出会えればアッパーミドルクラスの暮らしは可能だ。
固定費があがるから、そこまでの家にすまなくてもという考えはあまり耳にすることはない。単身でも、努力が出来る若い夫妻でも、賃貸の手狭な家で暮らしを始め、収入が増えるに従い、ヤドカリ式に家を大きくしていく。
人が憧れるような家に住めるまで諦めず、豊かな暮らしを目指し走り続ける人達によってアメリカの経済力は支えられているような気がする。