今の時代、本当にインターネットによって何でも調べることが出来る。そして、どの政府機関に行っても職員が親切丁寧に色々教えてくれるのである。必要なことを事前にインターネットである程度調べることさえできれば、専門家を雇わずとも結構なんとかなるもんだ。
自分で相続手続する道はある
この秋、父親が亡くなり葬儀を済ませた。その後に必要となるのは相続手続きである。遺産といえるものは余りないので我が家は母親が一切を相続する形式を選んだが、母親も年を取って一人で手続きをするのは難しい。
丁度今、私は時間に余裕がある暮らしをしているということで、出来るだけ専門家を雇わずに、私が必要なことを調べ、母親と二人で一連の相続処理をすることにした。我が家の場合、難しそうな手続きといえば車の所有者変更と家の登記名義変更の二つである。
車屋さんや司法書士を雇わずに、名義変更を自分でやれば10万円以上の節約になる。煩わしいことを自分でしたくなければ専門家に依頼し、お金で解決すればいい。しかし、10万円あれば旅行もできる。お金はを使うなら楽しく使う方がいいからと、まずは自分たちで手続きを進めてみることにした。
資産家の相続ケースなら専門家を雇ったほうが良さそうだ。資産が大量にあり、相続する人数も多かったら我が家も専門家を雇っていただろう。しかし、我が家の家族構成は至ってシンプルで、資産も少ない。田舎に住む親の相続手続き程度なら勉強にもなるからと、自ら取り組んだ。
結果的に、我が家は専門家を雇わずに全ての手続きを数週間の間に滞りなく完了することが出来た。だから、我が家と同じように難しいことのない相続手続きであれば、自分で処理することは可能だろう。
山ほどあるネット相続手続き情報
インターネットには、相続手続きの情報も本当に山ほどある。法務省や、市町村のウェブサイトにもアレコレあるが、加えて沢山の専門家が必要な情報を画像を使ったりして相続手続きを分かり易く説明してくれている。
我が家の場合、遺言書は存在しない。だから、法定相続人である母親と、私を含む両親の子供だけで話がまとまる簡単なケースだ。そして特に疑問もなく、子供一同は相続放棄をして、全て母親が相続するように相続を進めたのである。
我が家のケースの場合、遺産分割協議書さえあればスムーズに全てが処理できそうだと判断した。こうして私は早速、遺産分割協議書の作成にとりかかった。
遺産分割協議書を作成する
「遺産分割協議書ひな形」とインターネット検索をすれば、沢山のひな形が検索結果に表れる。検索結果に表示される無数のひな形の中から目星を付けて、我が家に合うひな形を探す。
我が家には必要ない項目だったり、文言を含むひな形も沢山あるから、自分のシチュエーションに合うものを選んで、それを参考にしながら加筆と修正をして自分の遺産分割協議書を作成をする。
インターネットの検索キーワードには、「一人が相続」や、「相続放棄」というようなキーワードを使って自分たちのケースに合う文字を加えて検索すれば近道ができる。
我が家用の遺産分割協議書が大体できたら、内容に過不足がないかを再度インターネット上にある他のひな形を参考にして比較しながら確認すればいい。
残念ながらインターネット上には誤った情報も掲載されていることがある。それを参考にして誤った文章作成をした場合、やり直しになっても自己責任だ。だから、ひとつのひな形だけに頼らず、いくつかのひな形を確認して完成するのがよさそうだ。
参考ウェブサイト 相続会議の遺産分割協議書説明
相続会議サイト 遺産分割協議書説明ページ
私はいくつものウェブサイトのひな形を参考にして、シンプルに必要事項が網羅されたひな形を使った。法廷相続人全員分の住所と、生年月日を記載し、直筆署名と印鑑登録済みの実印で調印をした遺産分割協議書を人数分作成し、最後はそれらに割り印をして完成させた。
この自前の遺産分割協議書で相続登記も問題なく完了しているから特に問題はなかったのだろう。遺産分割協議書があれば、相続手続き処理は進められる。我が家のケースでは相続登記に必要だったが、銀行口座を閉じたりするにもコレがあれば滞りなく処理が可能になる。
相続による車の所有者変更
自分の住む地域の管轄運輸局へ必要書類を揃えて行けば、相続による車の所有者変更は1時間あれば終わるだろう。揃えた必要書類を持って、その運輸局に併設されている文書代行窓口に行き、料金3000円程支払えば、手間になる所有権移転申請書類を作成してくれる。
あとは文書代行窓口で受け取った書類を運輸局の名義変更の受付に提出して手続き完了を待つだけである。運輸局へ出向くことさえ面倒でなければ、文書代行料金に加えて500円の手数料を払えば、あっさり車の所有者変更処理が終わるのだ。
さらに節約したければ少々時間がかかるが文書代行を依頼せず、自分で申請書の書き込みすることも可能ではある。
所有権移転申請書に自分で必要事項を記載する場合、いくつかの項目内容が分からなくても、少しなら受付窓口スタッフが加筆、修正の介助をしてくれるから、愛想よく「ちょっとわからない点があるのですが、お願いします。」とお願いしてみるといいだろう。
参考ウェブサイト 相続会議の自動車相続手続き説明
相続会議サイト 自動車相続手続きページ
価値100万以下の車所有権移転
参考ウェブサイト 相続会議の価値100万円以下の自動車相続続手続き説明
相続会議サイト 価値100万以下の自動車相続手続きページ
車の価値が100万円以下であれば、相続する車の所有権移転手続きはより簡略化する。我が家の父親名義の車は購入から10年近く経過している小型車だ。お世話になっている車屋さんに査定してもらい、車の価値が100万円以下である査定書を発行してもらった。
この査定書があれば、遺産分割協議書を利用せずに所有権移転の処理は可能になる。但し、その場合「遺産分割協議成立申立書」というものに必要事項を記載し、車の査定書と併せて提出する。この手続きなら準備する書類が減るから車の価値が低い場合は間違いなくこの方法を利用するのがいい。
相続による土地建物の登記変更
相続による家の土地建物の登記変更についても自分で手続きする為の情報は十分にインターネットで得ることが出来る。それに、法務局では登記についての相談窓口を設けていて、作成した相続登記書類一式のチェックをしてくれるのである。
参考ウェブサイト 相続会議の相続登記の必要書類説明
相続会議サイト 相続登記の必要書類説明ページ
法務局の相談窓口の予約は出来るものの、相談時間は20分程度という目安が設けられている。だから、1度の相談で完結しようとしているなら登記書類一式をほぼ完成させた状態で持って行き、最終チェックだけをしてもらうと想定したほうがいい。
我が家の場合は、登記申請書に書き込む「課税金額」と「登記免許税」の計算も自信がなかったので、その部分については空欄で書類を法務局に持って行って、その相談窓口で金額の計算もしてもらった。
法務局のウェブサイト掲載の必要書類リスト
法務局サイト 必要書類リスト案内
登記申請書の準備
登記申請書のひな形は法務局で参考ひな形を準備してくれている場合があるから、出向いてひな形をもらってもよさそうだ。私はインターネットで公開されているひな形を参考にして、自分で登記申請書を作成した。
参考にしたひな形から、登記の目的は、「所有権移転」と記載したのだが、父親は家の前の道路の一部を持っていて、相談窓口では登記の目的の表題が加筆され、「所有権移転及び山田太郎持分全部移転(持分後記の通り)」と修正された。(*山田太郎は被相続者氏名である)
このような部分は初心者にはわからない。やはり法務局相談窓口の予約は必須であったと感じた部分である。
もう一点、現在は相続登記に対し免税措置の適用があるらしく、不動産価額が100万円以下の土地については登録免許税がかからないとのことで、登録免許税の下部に、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により(一部)非課税」という文言の加筆もあった。
割り印は指示に従い最後に押印
相談窓口担当者からは、2枚に渡る登記申請書をホチキス止めし、2ページ目左部分、1ページ目の裏との接続部分に割り印をするように指示があった。
他の必要書類原本と併せて持参したコピー書類一式の1ページ目には「原本と違いない」と記載し、氏名の署名と実印を押印した。続く全ページに割り印をするのに、ページ全ての右端を折り、続く前後の2ページにわたって割り印を最後のページまで押印する指示もあった。
提出書類の割り印について何処に押印するのか、法務局の相談窓口で確認してから対応するのが一番いい。書類の内容確認が終わってから、指示に従い必要部分に押印をして書類を完成すれば間違いを防けるはずである。
改製原戸籍(ハラコセキ)
私はこの相続登記登録のための書類を集める過程で、戸籍謄本には複数の種類があることを初めて知った。今回の相続登記で必要になる戸籍は出生から死亡までの全ての戸籍謄本ということで、改製原戸籍(かいせいげんこせき)を取得する必要があった。
改製原戸籍とは、戸籍法の改正で新しい様式の戸籍に作り変えられる前の戸籍で、別名原戸籍(はらこせき)とも呼ばれるらしい。父親の改製原戸籍を役所に取りに行き、出生から死亡までの戸籍が欲しいのだと窓口で伝えると、父親の場合は全部で4部の戸籍謄本が発行され費用は約3千円位だった。
戸籍謄本に種類があったということを、実は私はこの歳まで知らずに生きてきたのである。私はこの相続手続きを自分で対応したおかげで、戸籍謄本に種類があることを知ることができたからやっぱり自分でやって良かったと思えた。
自分で手続する相続費用
相続する遺産の総計金額が法廷相続税控除に収まる額の場合は、それほど手続きは難しくないと思うので、自分で相続手続きを行えばかなり少額の費用で相続手続きを完了することが出来るだろう。
私はインターネットで情報収集と、文書作成に合計10時間程要したが、我が家の場合、土地建物の相続登記の登録免許税さえ4万円以下で済んだし、総額5万円程の費用で全ての手続きを終えることができた。
この数年、ひとりで父親の介護を必死にやってきた母親には、相続手続きでプロを雇わず済んだ分の浮いたお金で、温泉で体を休めて楽しい思いをして欲しいとおもうのである。